ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
螺旋階段を登りきると、頂上に指揮官へ謁見する部屋への扉があり、そこにいた兵士もシュヴァルツさんを見てすぐに扉を開け、私達を中へ通した。
真っ黒な石造りの部屋で、牢獄のように冷たく重苦しい空気が漂っている。
刀や槍、盾が壁に掛けられており、それはオブジェのように飾られているだけだった。
その部屋の中心にある書斎のデスクに、ひとりのお爺さんが座っている。
「ほぉ、シュヴァルツか」
分厚い本を読んでいるその老人は、濁った声でそう言った。
長い白髪と白髭が、途中で合流して結われており、年齢不詳の容姿。二百歳と言われても不思議じゃない。
この人が”ネロさん“……?
「ネロ」
「お主、休暇を終えて館に戻ったのではなかったか?規則を破り勝手に下界へ降りるとは感心せんぞ」
「俺の休暇は正確には今日までだ」
ネロさんはシュヴァルツさんと目を合わせず、本を読みながら受け答えをする。
「話があって来た」
「なんじゃ。迷い込んでおる人間のことか」
「……なぜ知っている」
「知っとるさ。館で人間の血の匂いがするとの報告があった。それも、極上の血に、純潔。そうとうな値打ち物じゃよ」