ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
大学からスーパーへ寄るまでの道のりには、見慣れた月夜ヶ丘の住宅街が続いていて、この景色を見るたび、昔のことを思い出した。
私の“不幸体質”は生まれつきだった。
私がこの町へやってきたのは、父方の叔母さん家に引き取られた十二歳のとき。
記憶にすら残っていないけれど、両親は私が幼い頃に交通事故で亡くなった。
山道のカーブで曲がりきれずガードレールに突っ込み、車が大破するほどの事故だったのに、チャイルドシートに座っていた私だけが何故か無傷のまま助かったらしい。
身寄りのなくなった私が預けられた母方の叔母さんの家は、やってきてすぐに離婚した。
彼らは私を引き取ってから喧嘩が絶えなかったから、幼いながらに自分のせいだと理解していた。
次に父方の叔母さんに引き取られてこの町へ来たけれど、半年くらいして、従兄弟である息子が後遺症が残るほどの大怪我をした。
家族だけじゃない。
どこへ行っても私と関わる人は不幸になり、自分が疫病神なのだと嫌でも気付いた。
人と関わることを避けるようになった。
十八歳になったとき彼らから逃げるようにひとり暮らしを始め、今は大学やアルバイト先への往復のみの生活をしている。
これでいい。
私は誰とも関わるべきじゃない。
愛想笑いしかできない付き合いの悪い女でいい。
さっきも加賀先輩とご飯に行っていたら、彼は階段から落ちるだけでは済まなかったのかもしれないし。
これでいいんだ。