ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「ネロ。人間界での行方不明事件はすでに四件発生している。ゆゆしき事態だ。我らの世界に潜む悪しきヴァンパイアを捕らえ、迷い込んだ人間を戻さねばならない」
ネロさんは黙って話を聞いたあとで、やっと本を閉じ、彼を見た。
「それが事実なら、確かにゆゆしき事態じゃな。……しかし、お主の仮説は少々突飛すぎはせんか?人間界での行方不明事件がすべて我らヴァンパイアの仕業だとは言い切れん。そのようなこと、襲われかけた人間をお主が匿ってでもおらぬ限り、思い付かぬと思うがのう?」
シュヴァルツさんとネロさんの鋭い視線が、お互いを突き刺すように交差している。
そう、このお爺さんの言う通りだ。
シュヴァルツさんは私を匿っているから、行方不明事件がヴァンパイアの仕業だと知っている。
でも、もともとこの人には相談をするつもりでここへ来たのだから、私の正体を明かしてもいいはずなのに、どうしてシュヴァルツさんは黙っているんだろう。
「人間を匿っているなら、俺はアンタの前に真っ先に差し出している」
「……ふむ、それもそうじゃな」
「ネロ、俺の休暇中に人間界へ行った旅行者のリストを出してくれ。旅行者から犯人を洗い出す」
「よかろう。議事堂で保管しておるから取りに行け」