ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「隣のお嬢さんは、どなただったかのう?」
質問とともにネロさんの視線を背後から感じ、いきなり空気が重苦しく変わると、不快な感覚が私の背筋を這い回った。
シュヴァルツさんの抱き寄せる手の力が、一層強まった。
「俺の女だ」
私は顔が熱くなり、俯く。
もちろん嘘なのは分かってる。なんでそんな嘘をついているのかは分からないけれど……。
「ほお……?珍しいのう」
「もう行くぞ」
扉の外へ出て私たちだけになると、彼は一度扉を振り返って、その向こうにまだネロさんが見えているかのように鋭い視線を送っていた。
「……シュヴァルツさん?」
名前を呼んでも、シュヴァルツさんは黙ったまま、ゆっくりと階段を降りていった。