ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

「では、ネロ様がアカリ様を襲った犯人だということですか?」

ノア君がそう言ったのでお爺さんと犯人の“夜野さん”を重ねてみるけど、似ても似つかない。

「いや、あのネロが黒の塔を離れることは容易ではない。奴はあくまで司令塔であり、実行犯とコンタクトがあると考えるのが自然だ。そしてすでに、事件がネロの耳に入っているということは、犯人は人間界からこちらへ戻っている可能性が高い」

ついさっきまで味方についてもらおうと思っていた人も、こうして簡単に疑わしき人物になってしまうなんて。

私は誰が自分を貶めようとしているか分からないこの状況が、心底恐ろしくなった。

「そもそも俺に休暇を取るよう勧めたのもネロだ。やはり何かあるな……」

シュヴァルツさんが考え込んだことで、部屋の中は沈黙した。

ノア君も私も頭を捻って考えてみるけれど、彼が考えること以上の結論が出るわけはない。

「これからどうするんですか?」

私が尋ねると、シュヴァルツさんはやっと顔をあげた。

「明日、この街を出て、旅行者のリストを取りに議事堂へ行く。ダークナイトが人間界へ通した者を片っ端から洗っていくしかない」

明日もまたどこかへ行くらしいが、とりあえず、色々なことが起きすぎた今日がやっと終わる。

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