ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
この流れるような所作は、森でされたような、血を吸われる前触れだと気づいた。
「は、はい……」
やだ、私、期待で胸が鳴るなんて……。
思い出しても痛くなんてなくて、むしろおかしくなるくらいに気持ちがよかった。
でもその感覚に溺れることは、自分が自分ではなくなっていくようで恥ずかしい。
また甘えた声を出して、彼に身を委ねてしまうかもしれない。
シュヴァルツさんはそんな私をどう思っているだろう。はしたない女だと思って呆れているのかな。
「シュヴァルツさん、あの、ごめんなさい」
「……何のことだ」
今にも牙を立てようとしていたシュヴァルツさんにそう呟やくと、彼は一度止まり、首もとに顔を近づけたまま、視線だけこちらへと向けた。
彼の髪が触れるだけで、緊張で素肌がピリピリと痺れた。
「血を吸われるとき、私、少し変になってしまって……。おかしいですよね」
彼は私の肩を押し、少し強引に後ろへと体を倒していく。
「痛まないのなら、それで良い」
すぐには牙を立てず、唇は素肌の上をゆっくりと移動していく。
こうして血を吸われているときや、私を抱き寄せてくれるとき、これは彼の仕事だとは理解しつつも、どうにも胸が高鳴って仕方がない。
私の緊張をほぐすための優しい言葉も、溺れそうなくらいに甘く感じる。