年下御曹司は初恋の君を離さない


「イタタ! 放せ。放せと言っているだろう!」
「放す? バカな。痴漢を野放しになんてしていられないだろう?」
「俺は痴漢なんてしていない。証拠もないのに、勝手に犯人扱いをするな!」

 ギャンギャン叫んでうるさい男に、私はスマホの画面を見せてやる。
 すると、ようやくその男は黙りこくった。
 スマホの画面には、この男が女の子のお尻を触っている姿がしっかりと映っている。
 キチンとした証拠があるため、この男もさすがに諦めたのだろう。
 ガックリと項垂れて、抵抗をしなくなった。

「写真を撮っていることにも気がつかないほど、彼女の身体に触れていたということだよ」
「……っ」

 ちょうど電車は駅のホームへと滑り込んでいく。
 抵抗もせず肩を落とす男の腕をグッと握りしめたまま、電車が駅へと着くのを待つ。
 ゆっくりと車両は止まり、扉が開いた。

 私はその男の腕を掴んだまま、人の流れに逆らうことなく駅へと降り立った。
 さすがにこれだけの証拠があっては、抵抗をすることを諦めたのだろう。

 大人しく付いてきた男にホッとしていたのだが、その油断がいけなかった。

 その男は私に体当たりをしてきて、それにビックリした私は掴んでいた腕を放してしまう。
 後を追うとしたのだが、通勤ラッシュの今、人がホームに流れ込んでしまい追うことができない。

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