年下御曹司は初恋の君を離さない
「でも、私は本当に助かりました……ありがとうございました」
彼女は勢いよく頭を下げてから顔を上げたのだが、そこには先ほどまでの恐怖が色濃く残っていた。
その青白い顔を見て、私の胸が痛む。
彼女を労るように、頭に触れる。そして、ゆっくりと撫でた。
目を丸くして私を見上げる彼女は、家で飼っているチワワのように愛らしかった。
少しでも彼女の憂いが消えるように、優しくほほ笑みかける。
「ここの路線、痴漢が多いから今後は特に気をつけた方がいいよ」
「そ、そうなんですね……」
「うん。君は可愛いから、特に気をつけなくちゃ。狙われちゃうよ」
「っ!」
顔を紅潮させる彼女は、とても愛らしかった。
再び彼女の頭を撫でながら声をかける。
「とにかく駅長室へと行って、事情を話そう。今後のためにもその方がいい」
神妙な顔で頷く彼女を連れて駅長室へと行き、事情を説明する。
一応証拠写真を提出したあと、私たちは駅長室を後にした。
「そういえば、今から学校じゃないの? 制服じゃないけど、学生さんだよね?」
「あ、はい。うちの学校は私服登校OKなので」
「この辺りの高校は制服ないところが多いからね。でも、早くしないと遅刻しちゃう」
彼女を見下ろすと、不安げに瞳が揺れていた。まだ、先ほどの痴漢行為の怖さが残っているのだろう。
ギュッと胸が締めつけられた私は、彼女を労るように笑う。
「今日のことは忘れなさい」
「……はい」
「ただ、これからバカな男たちの餌食にならないよう、充分気をつけること。いいね?」
神妙な顔付きで大きく頷いたあと、彼女は再び縋るように私を見つめてきた。
どうしたのか、と首を傾げると、彼女は意を決したように口を開く。
「あ、あの……お名前と連絡先を教えてください!」
「え?」
「えっと、その……お礼させていただきたいので」
目を潤ませて必死に懇願してくる彼女を見て、私は苦笑いを浮かべる。