年下御曹司は初恋の君を離さない
何かを話さなくちゃ、そう思うのに、何も言葉が出てこない。それでも、この沈黙はドキドキしすぎて居たたまれなくなる。
どうにかしてこの空気を変えなくては。そんな願いにも似た思いを抱く私に、助けの手が差し伸べられた。
『次は、●●駅。お降りの際には……』
降車駅のアナウンスが流れ、私はホッと胸を撫で下ろす。
このままの状態では、私の心があと何分保つかわからなかった。本当に助かった。
「ほ、ほら! 友紀ちゃん。次降りるんでしょ?」
「……」
「ほらほら、離れて!」
彼の胸を押して離れようとすると、さすがの友紀ちゃんも観念してくれたようだ。
心臓に悪い状況を打破できたと内心で嬉々していた私だったが、彼の方が一枚も二枚も上手だった。
「離れないよ」
「は……!?」
「離さない」
ようやく離れた距離だったのに、彼は私の手を握りしめてきたのだ。
彼のぬくもりを直で再び感じることになり、警戒を解いた私の心臓は一気に高鳴ってしまう。