年下御曹司は初恋の君を離さない


「それで駅長室に?」
「そうです」

 先ほど一緒に乗り合わせていた女子高校生が被害に遭ったと言うと、駅員さんは深いため息をついた。

「全く。この路線は本当に痴漢が多いね」
「ですね。駅員さんや車掌さんたちが懸命に防止対策をしてくださっていることは知っていますが、ラッシュ時などは防止するのも難しいですものね」
「そうなんだよね……。それで、犯人は?」
「捕まえたんですけど、逃げられてしまいました」

 ガックリと項垂れる私を見て、駅員さんは大きく首を横に振る。

「いくら男性の格好をしていたって、久保さんは女の子なんだから。力では男に勝てないよ。無理だけはしないで。久保さんが逆恨みされたらどうするの!」
「う……」

 駅員さんの言う通りだ。こうやって男性に見えるように髪をショートカットにし、ジーンズにTシャツといった装いをしていれば、見た目だけは中性的な男性に見える。
 だけど、蓋を開ければ、どうしたって私は女だ。

 見た目だけはなんとかごまかせたとしても、力では男性に勝てないだろう。
 だけど、私は痴漢被害に遭った女性たちを見て見ぬふりなんてできない。

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