年下御曹司は初恋の君を離さない

 向こうが初対面を貫くのなら、私も貫き通して見せよう。
 伊達にクールな副社長専属秘書をしてきたのではないのだから。
 戸惑い続けている私にもう一度お盆を差し出してきて、説明をし始めた。

「こちらの上生菓子は、新年に発売予定のものなんですよ」
「そ、そうなんですね」
「ぜひご試食いただいて感想をいただけたらと思うのですが、いかがでしょう?」

 ここまで言われているのに断ったら、友紀ちゃんが不審に思うだろう。
 早くこの時間が過ぎていくことを願いながら、「では、一つ頂きます」とお菓子に手を伸ばした。

 松に見立てた煉切はとても上品な甘みで、濃茶と一緒に食べたくなる一品だ。
 新年用ということで、縁起もよさそうなお菓子である。

 赤こし餡は滑らかで、舌触りも大変いい。とても美味しいお菓子だった。
 友紀ちゃんが目を付けただけあるし、さすがは老舗和菓子店の暖簾を掲げるだけのことはある。

 和菓子と洋菓子の融合。色々なパターンは世の中に出回っているが、あっと驚くようなコラボをしたいと友紀ちゃんは考えていることだろう。

 芸術作品だと言っても過言ではないきさらぎの和菓子と小華和堂の菓子。
 それぞれ業界のトップを走る二つが手を組んだら、どんな化学変化が起こるのだろうか。

 思わずワクワクしてしまいそうなほど、この和菓子は魅力に溢れていた。
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