年下御曹司は初恋の君を離さない

「美味しい……」

 思わず口から零れた言葉は、私の素直な気持ちだった。
 昔から和洋問わずにお菓子が大好きだ。ユニセックスな容姿をしていた頃だって、女の子が好むパンケーキとかも好きだったし、可愛いもの、美味しいものに目がなかった。
 サークルの子たちに声をかけ、よく食べ歩きをしたものだ。

 そういうとき、決まって私がずっと行きたがっていた可愛らしいお店に藤司さんは連れて行ってくれた。
 そういう優しさを思いだし、だけど私に仕向けた刃のような言葉が脳裏に浮かんで泣きたくなる。

 藤司さんは、嬉しそうに目尻に皺をたっぷり寄せてほほ笑んだ。

「よかったです」
「……ご、ごちそうさまでした」

 黒文字をどうしたらいいのか、と戸惑っていると、藤司さんが私の指に触れた。

「っ!」
「こちら、お預かりしますよ」
「あ、ありがとう……ございます」

 彼に黒文字を手渡したあと、ようやく我に返った。
 友紀ちゃんは小華和堂の副社長として藤司さんに挨拶をしたのだ。ここは過去のことは置いておいて、自分もビジネスモードに切り替わらなくては。
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