年下御曹司は初恋の君を離さない
「悪いな、未来」
「い、いえ……」
「お前のこと、せせらぎの皆が気に入っちゃっているから」
「まぁ……嫌われるよりいいですよ」
藤司さんには昔かなり嫌われていたみたいですけど、という言葉は慌ててのみ込む。
店から少し離れたところに駐車場がある。そこに向かって二人で歩きだした。
駅からも近いから電車で帰る、と何度も藤司さんには言っているのだが、彼は何が何でも私を車で送り届けてくれる。
『無理を言っているのは、こっちだから』と言って、絶対に意見を曲げない。
だが、この時点で藤司さんが言っていることはおかしいのだ。
当初、藤司さんからの要求は〝自分が呼んだら必ず来い〟という理不尽なもので、ある種脅迫だったはずである。
私としては行きたくはなかったが、藤司さんからの誘いを断った場合、小華和堂との仕事は白紙にすると言われて渋々従うことにしたのだ。
そして私が呼ばれる理由というのが、商品の品評のはずだった。だが、蓋を開けてみれば、美味しいお菓子を頂き、藤司さんにお抹茶を点てていただいてそれを頂く。
大将や女将さん、従業員の皆さんとの楽しい座談会。それが主な内容だったのである。
それなのに、藤司さんは日を開けずに私をメールで呼び出してくるのだ。