年下御曹司は初恋の君を離さない

 そして……その不愉快極まりない人物を押さえ込むための策も用意できた。
 あとは、未来さんのトラウマに大きく関わってきた藤司謙也と腹を割って話すだけだ。

 和菓子博へ行き、初めて藤司と顔を合わせたのが三週間ほど前。まさか、こんな展開になるとは夢にも思わなかった。
 俺が藤司に向かってほほ笑むと、彼はようやく諦めて腰を下ろす。

「やはり……畠山は動き出したか」

 今はビジネスの場ではない。一人の男という気持ちで俺がこの場にいるということが伝わったのだろう。
 藤司もビジネスライクの顔を捨て、俺に対峙してくる。
 俺は小さく頷いたあと、鼻で笑う。

「ええ……。素敵な写真を送りつけてきましたよ? 見ます?」

 たっぷりとイヤミをつけて言うと、目の前にいる藤司は不敵に笑う。
 ジャケットの内ポケットから、畠山側から送られてきたのであろう写真を畳の上に置く。
 どれも未来さんと藤司が一緒に映っているものだ。
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