年下御曹司は初恋の君を離さない

「ますます危険ですから、藤司さんに未来さんを任せてはおけませんね」
「……」
「なんでも、未来さんがここに来ている理由というのは、商品の品評のためという名目らしいですね。それならうってつけの人間がいますから、ご安心ください」

 腰を上げつつ、まずは智子に〝和菓子店せせらぎ〟の住所と藤司の連絡先を伝えておこうと勝手に決める。

 では、と茶室から去ろうとする俺の背中に、藤司は声をかけてきた。

「未来を……守れよ」
「言われるまでもありません。それに、藤司さんに頼まれなくたって、未来さんは俺が離しませんから。ご安心ください」
「……」

 何も言葉を発さない藤司に、背中を向けたまま言う。

「未来さんの心の傷ごと……彼女を包み込んで愛しますから」
 それだけ伝えると「では、次回は会合のときに」とビジネス仕様の表情に戻った俺は、彼に一礼してその場を後にした。
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