年下御曹司は初恋の君を離さない

 ビジネスクラスなら、もう少し席と席が離れているから隣同士になったとしても、一定の距離が取れたのに。
 彼女に小さく会釈しながら、そんなことを思いつつ違う便にすれば良かったと心の中で悪態をつく。

 しかし、これだけ用意周到にしている畠山だ。
 仮に俺が違う便のチケットを取ったとしても、調べて同じ便に乗ってくるだろう。
 財力と権力を持ち合わせている世間知らずのお嬢様は、これだから厄介だ。

 俺の隣に座った畠山は、ニッコリとほほ笑んでくる。その笑みは何も知らない人間が見れば艶やかに見えることだろう。
 だが、彼女の本心を知っている俺からしたら、あくどく醜い笑みに見える。

 そんな彼女を見ていたら、ますます未来さんに会いたくなってしまった。
 どんなにイライラしていたり疲れていたとしても、未来さんの笑顔を見るだけで俺は元気になれるし、どんなことでも乗り越えられると自負している。

(ああ、未来さんに会いたい……)

 数時間、この女に付き合わないといけないかと思うと、げんなりしてしまう。
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