年下御曹司は初恋の君を離さない


「未来さん。どうか、私の甥に力を貸してやってはくれないか?」
「……」
「未来さんなら、まだまだ力不足の甥を支えることができるはずだ」

 縋るような目をして副社長が言うものだから、私は戸惑ってしまう。
 私は、今こそ副社長専属秘書をしているが、小華和堂においては一社員の一人。
 人事については、私がどうこう言える立場ではない。

 だが、こうして副社長から直接打診があったということは、すでに内部では副社長が引退し、その後釜には社長の息子であり、副社長の甥である人物が引き継ぐことが決定しているということだろう。

 だからこそ、副社長は私に打診してきたと考えていい。
 チラリと副社長の顔を見ると、穏やかにほほ笑んではいる。だが、目が真剣だ。

 これは何が何でも私にそのまま副社長専属秘書をさせたいと思ってのことなのだろう。

 副社長は一見穏やかな人だ。
 しかし、やはりそれだけの人ではない。そうでなければ、この大手お菓子メーカーの副社長を長年勤め上げることなど不可能だ。

 小華和堂は、老舗と言われるだけあって世襲制が導入されている。

 だが、ただ血縁だから重役をしているお飾りではない。
 なんでも幼い頃から、企業のトップに立つべく色々な勉強を強いられていると聞いたことがある。

 だからこそ、今度の新副社長も力がある人なのだと思う。
 そうでなければ、いきなり副社長の座を射止めることなど不可能だからだ。
 そんなに甘い会社ではないことは、身近で重役の皆様を見ている私がよく知っている。

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