年下御曹司は初恋の君を離さない


(私……こんなふうに男性に抱きしめられたこと、ない!!)

 二十八年という間、私はこんなに男性と接近したことはない。
 あるとしたら……父親と弟ぐらいである。

 中性的な容姿だから女性にはモテたが、男性にはモテたためしがない。からっきしだ。

 それに、過去に深い傷が残る失恋を経験している。
 あのときの痛みを思い出すたびに、男性とのお付き合いに積極的になれなくなっていた。
 だからこそ、私は未だにあの時の痛みを引きずっているのだ。

 それは、この容姿にも関係することで……

 そんなことを考えて、今のこの状態から現実逃避をしてしまう。

 だって、なによこれ。どうしてこんなことになっているの!

 ようやく我に返った私は、慌てて彼の胸を押した。
 だが、あの頃の友紀ちゃんとは比べものにならないほど、力強く再び私を抱きしめてくる。

 当たり前だ。だって、友紀ちゃんは痴漢に遭って瞳を潤ませていた女の子ではなく……私より身体が大きくなり、声も低くなった男性なのだから。

「この瞬間を、ずっとずっと夢見ていました」
「友紀……ちゃん?」

 私を抱きしめていた手を解き、彼は私の顔を覗き込んできた。
 そして、見覚えのある笑みで私を包み込む。

「覚えていますか、未来さん」
「え?」

 先日届いた葉書のことだろうか。友紀ちゃんにそう聞くと、彼はゆっくりと首を横に振る。
 そして、フッと柔らかくほほ笑んだ。
 その笑みはとてつもない破壊力があるほど魅力的で、私の胸はドクンと大きく高鳴った。

「違いますよ、未来さん。忘れてしまいましたか?」
「え?」

 友紀ちゃんの声が急に艶っぽく変化する。
 空気が変わった。そう思った瞬間、私の顎に彼の手が触れたのだ。

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