年下御曹司は初恋の君を離さない


 友紀ちゃんは、私の顎を掴んだまま、親指で唇をなぞってきた。
 ゾクッと今までに感じたことがない刺激が背を走り、膝が震えてしまう。

 ちょっと、待って。どうして、私は何も言えないのだろう。彼の手を振りほどけないのだろうか。

 相手は昔、自分が痴漢から助けた女の子……いや、結果的には男の子だった友紀ちゃんだ。
 あの頃は、私が男のフリをしていたということもあり、友紀ちゃんを守るのは私の使命だと思っていた。

 だけど、今はどうだろう。
 すっかり身長も体型も大人で、私より大きくなった彼。
 見た目だけではない。彼は私の上司として現れたのだ。

 ———形勢逆転

 そんな言葉が脳裏をかすめた。
 頭の中が混乱を極めている私に、友紀ちゃんは腰が痺れてしまうような低く艶っぽい声で囁く。

「覚悟をしてくださいね、と」
「……覚悟?」

 一瞬、彼が何を言っているのかわからなかった。
 だが、すぐに昔の記憶が呼び戻されていく。

 友紀ちゃんが留学する。
 そう告げられたとき、友紀ちゃんは私に向かって言ったはずだ。

 そして、一緒によみがえった記憶で一番強烈だった言葉も思い出す。

『未来さんが、好きなんです!』

 思い出した瞬間、カッと頬が熱くなる。
 
 友紀ちゃんに告白されたときは、ただ「どうしよう……」と戸惑っただけだった。
 なんせ、友紀ちゃんは私のことを男だと思って告白をしてきたのだ。
 友紀ちゃんは勘違いをしてしまっただけで、私が女だと説明すれば、好きなんていう気持ちは消えてなくなってしまう。そう考えたからだ。

 誤解されたまま別れてしまったことに後悔はした。
 だが、いつかは友紀ちゃんの気持ちは風化して消えてしまうとばかり思っていたのだ。

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