年下御曹司は初恋の君を離さない


 そそくさと扉に向かい、ノブに触れる。あと、もう少しで脱出成功だ。

 ホッと気を緩ませたが、それには少々早すぎた。ドアノブを掴む私の手は、大きな手の平に包み込まれている。もちろん、手の持ち主は友紀ちゃんだ。

 カチンと石のように固まった私に、友紀ちゃんはより近づいてくる。
 背中に彼のぬくもりを感じて、心臓が破裂しそうなほどドキドキし始めてしまった。

 マズイ。このままでは、信じられないほど高鳴る胸の鼓動を聞かれてしまう。
 冷や汗がタラリと背中に垂れるような感覚がした。どうしよう。
 このまま何事もなかったように、ドアノブを回して外に出てしまおうか。それとも、「どうしましたか?」と何食わぬ顔をして友紀ちゃんを振り返ってみようか。

 時間にすれば数秒だったに違いない。だが、私の体内時計では果てしなく長い時間にも感じられた。

 あれこれ考えこんで固まる私を、友紀ちゃんは背後から抱きしめてくる。まさかの行動にますます身体が固まってしまう。


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