失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
「今日の夕食はご近所さんから頂いた鶏肉と野菜スープ、あとは初めて私が作ったパンよ」
弾む声でミランダは料理をテーブルに運ぶ。手伝おうと台所を覗いたリリエラだったが、目の前の光景になんとも言えぬ顔をした。
鳥の姿が容易に想像できる姿焼きに、ゴツゴツと大きな野菜が入ったスープ。極めつけは、パンと形容しがたい黒焦げの物体。
「……ご、ごめんなさい、お母様。私がもっと早く帰れていれば手伝えたのに」
「あら、気にしないで。見た目は……あれだけど、味は保証するわ。是非感想を聞かせて?」
「え、ええ。もちろんよ」
若干リリエラの声が上ずったのは仕方あるまい。それに、この光景は見慣れたものだ。
ミランダの料理は、味は確かに美味しい。ただ、食べやすさや見た目が大雑把で今一つだ。本人も自覚はあるようだが、なかなか癖が抜けないらしい。
というのも、彼女が家庭料理をし始めたのは六年ほど前からで、それまでは料理は愚か、家事すらしたことがなかったのである。
「今日は豪勢だなぁ」と言ってニコニコ嬉しそうに笑う父と、「そうでしょう? さぁ食べましょう」と少し誇らしげな表情を浮かべながら席につく母。
どう見ても、質素ながら幸せに生きているどこにでもいるような家族だが、こんな光景を見るたびに、リリエラは、両親は凄いなと思えてならなかった。
なぜなら、彼らは六年前まで貴族、それも伯爵位を持つ者達だったからである。