失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
可愛らしい子供達との時間が過ぎ去り、夜と昼のちょうど境目の色に町が染まる頃、リリエラは帰宅する。
町一番の繁華街を横切り、住宅地を抜けた先、町の端にちょこんと建つ、小さな畑のある家。
別に辺境の地に建っているわけではない。それなりに家もある。ただ、両脇の家と比べても小さいそのサイズ感に、ちょこん、という表現がピッタリなのである。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさい、リリー」
家に入ってすぐのリビングの奥にある台所から顔を出し、リリエラを笑顔で出迎えたのは母親のミランダ・マホーン。
指通りのよさそうなプラチナブロンドの長い髪を一つに結び、涼やかな薄紫の瞳を持つ、年を取っても衰えない美貌の持ち主。
「私も今帰ったところだ」
「お仕事お疲れ様でした、お父様」
そして、一番奥の両親の寝室から現れたのが、父親のゼルクス・マホーン。リリエラと同じ少し癖のある金髪に、穏やかそうな青い瞳、少し顎に髭の生えている、人のよさそうなおじさまだ。
ゼルクスの仕事は女神の涙などの加工で、家の裏には小さな工房もある。
因みにリリエラの家族は両親の他に、二歳下の母親似の弟、ジョナスがおり、町の自警団に所属している彼の部屋が申し訳程度に一階に、リリエラの部屋が屋根裏部屋にある。
最初は天井の低さに慣れなかったが、今ではリリエラにとってお気に入りの場所だ。