失礼ですが、強い女はお嫌いですか?

金髪男は躊躇することなく拳を横に振り抜く。それをリリエラはギリギリでかわした。
先ほどの女性の悲鳴は、拳から逃がすためにリリエラが女性を引っ張ったことで驚いたからだ。


「少し離れていて」


リリエラは意識して女性に優しく声をかける。動揺していた女性は、黙って頷き返し、言われた通りにするしかなかった。

一方、男はというと女にかわされただけでなく、余裕綽々と女性を避難させているリリエラに腹わたが煮えくり返っていた。顔を真っ赤に染める男の肩が怒りで上下する。


「くそっ、なめやがって」


リリエラは男を真っ直ぐ見据え、対峙した。
リリエラの身長は一般的で、さほど高くない。男と並べば小さく見えるほどだ。身体だって細く、辺りで状況を見守っていた通行人が心配を隠せないくらいである。

けれど、当の本人であるリリエラに怯える様子はなかった。


男がリリエラとの距離を一気に詰める。その勢いのまま振り落とした拳を最小限の動きでかわし、リリエラはすぐさま距離を離す。

男が蹴りこんできても、身軽にかわし、一定の距離を保つ。それは端から見ていても不思議な戦いであった。
攻めているのは男なのに、必死な形相なのも男で、逃げているようにしか見えないリリエラは、どこか飄々としている。


「おま、え……何、を」


男は明らかに疲れていた。それもそのはずで、リリエラは右に左にとまるで羽が映えているかのように軽やかに動き、男はそれを追い続けているのだ。それも、全力で攻撃をしているのに当たらない。

喧嘩にしては長い攻防で、男は身体はもちろんだが精神的にも疲労していた。それでも止めないのは、プライドやら何やらが邪魔をするからだろう。

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