失礼ですが、強い女はお嫌いですか?

「でもそれは、勘違いじゃないでしょう?」


リリエラの見せる表情は、先ほどのはにかみ笑顔のままであったが、声のトーンが明らかに違った。


「え?」


突然変わったリリエラの纏う空気に男が動きを止める。
その隙に、リリエラは男の服のポケットからある物を抜き出した。


「そ、それ、私のお財布!」


リリエラが抜き取った物を見た瞬間声をあげたのは、道を尋ねられていた女性だ。


リリエラが男から視線を外そうとした時見たもの。それは、男が会話をしながら女性の財布を鞄から抜きとる瞬間だった。


「これは、貴方のじゃないですよね?」


リリエラから笑みが消える。
男も優男の仮面を外し、顔を怒りに歪め、舌打ちをした。確実にこちらが本性だろう。


「それ言うためだけに声をかけてきたのか」

「自分より弱い相手を狙うその根性が気にくわないの」

「へいへい、ご立派なことで。でも、お前も同じだろう?」


そう言った男の表情が蔑んだものへと変わる。
その顔を目にしたリリエラの脳裏に、あの時の男ーー幼い子供の部屋へ勝手に入り、父からの誕生日プレゼントを持ち去った男の顔が浮かんだ。


「ええ、そうね。私は女よ」


リリエラの呟きは男へ届く前に、女性の悲鳴によってかきけされた。

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