失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
カチャカチャと機械的な音が室内に響くこと数十分。
「よし、終わり!」
しゃがみこんでいたセイレーンは、ぐーっと体を伸ばし立ち上がった。
そんなセイレーンへリリエラは労いの眼差しを向ける。
「お疲れ様」
「ありがとう。じゃあ、私は帰るけど、使い方は大丈夫だよね?」
小さな体のセイレーンには大きすぎにも思える工具箱を可愛らしい鞄にしまいつつ、確認をとってきたセイレーンにリリエラは大きく頷き返した。
「大丈夫。あとは任せて、セイレーン」
「無理だけはしないでね」
そう言うと、セイレーンは玄関へと足を向ける。リリエラも見送りのため、セイレーンの後を追った。
そう、ここはセイレーンの家ではない。
「それじゃあ、明日ね、リリエラ」
「うん。明日ね」
ヒラヒラと手を振り送り出してはいるが、リリエラの家でもない。
セイレーンが玄関のドアをひねる。
その瞬間、二人の纏うテンションが一段階上がった。
「持ってきてくれたお菓子、本当に美味しかったわ!」
「よかったぁ。また作ってくるね。お茶、ご馳走。それじゃあ、またね」
「ええ、また」
きゃっきゃっと女性特有の高く弾んだ声が辺りに響き渡る。手を振り、去っていくセイレーンを見送るリリエラの表情からは、楽しかったという感情がありありと伝わってきた。
どこからどう見ても、家に友人を招いてお茶会をした女の子である。