失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
けれど、ドアを閉めた途端、リリエラの表情から笑みが消えた。
「さてと……」
ドアの鍵を閉め、腰に手をあて、部屋の中を見渡したリリエラは、ふんっと鼻から大きく息を吐く。
小さな机も、簡易的なベッドも、台所も、足を一、二歩進めればたどり着けてしまう距離にある。
貴族時代のリリエラの部屋にすっぽりと収まる広さだ。現在のリリエラが住む家の部屋よりも小さいかもしれない。屋根裏部屋じゃないので、天井はこちらの方が高いが。
「アイリスの顔の広さには驚かされてばかりね」
人それぞれ得意なことは何かしらある。
例え本人にとっては特別に思えなかったり、誇れないことも、他者から見れば凄いと感じることである、なんてよくある話だ。
アイリスは店を開くまでに色々な仕事をしたらしい。
それこそ、大きな声では言えないようなことや、苦しくて逃げたくなるようなこともあった、と言っていた。
けれど、そのおかげで様々なところにつてができているの、とアイリスはよく笑い話にしている。
そんなアイリスとリリエラの出会いも、縁のようなものと言えるのかもしれない。