翼の折れた鳥たちは
敦也くんは私の言葉に返事すらしなかった。
重光先生と親友3人は人ごみをかき分けるようにしてすぐに敦也くんの下へ駆け寄ってくる。
重光先生はもう目を真っ赤にして腫らしている。
敦也くんは、深めにかぶったキャップで顔を隠すようにして俯いている。
そんな様子を、胸が締め付けられる思いで私は見守ることしか出来ないでいる。
近寄ってきた重光先生が、急に敦也くんの前で跪いて、敦也くんの顔を覗き込んで穏やかな表情でにっこりと笑う。
「敦也、生きててくれてありがとう」
優しく微笑む重光先生の目じりからは輝く涙がほろりと流れたのが見えた。
私もすぐに目の前がぼやけてしまって、一気に涙が頬を伝う。
私だけじゃない、隣に立っていた前田さんだって、その隣の師長も鼻を啜って泣いていた。