翼の折れた鳥たちは

◇◇◇

「あぁぁ。せっかく葵ちゃんとデートだと思ったのにな。お前ら、邪魔すんなよ」

試合観戦のハーフタイムで、唇を尖らせた敦也くんが冗談交じりにそんなことを喋りだす。

なっ、何言ってんの、敦也くん!!

体育館に到着した時には、デートなんて言わないで欲しいとでもいう雰囲気を漂わせていたのに……。




「何言ってんだよ。敦也」

「うるさい、チカラ」

焦った私が慌てて喋りだそうとするよりも早く、チカラと敦也くんが呼んでいる親友が隣で、敦也くんの冗談に声をたてて笑っている。



私の心配をよそに、あっという間に敦也くんと親友たちは和やかな雰囲気になっている。

事故のことも、怪我のことも、リハビリのことも、それからこれからのことも、彼らは敦也くんに何も聞かない。

今、目の前に映るコトだけを見て、笑っている。

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