翼の折れた鳥たちは
「葵ちゃん、今日はありがとう」
帰りの車内、一番後ろで車いすに座っている敦也くんが、私の背中に声をかける。
敦也くんの声に反応するように後ろを振り返ると、いたって真面目な顔した敦也くんと視線がぶつかった。
「どういたしまして。頑張ったね、敦也くん」
今日は、記念日。
敦也くんが頑張って、外の世界へと飛び出した瞬間だった。
「頑張ってなんかないよ、俺」
私の言葉に予想外の言葉が返ってくる。
「車いすの俺は抵抗なんて出来なくて、無理矢理に体育館まで連れてこられた気分だったんだ。だけど、充実してた。楽しかったよ」
「うん」
「外の世界は、キラキラ光って見えた。怪我して全部が変わってしまったって思ってたけど、友達の優しさだとか、何かを見て楽しいと思える気持ちだとか、変わらないことだってまだまだあるコトに気が付いた」
鼻の奥にツンと熱いものがこみ上げてくる。