翼の折れた鳥たちは

「葵ちゃんのおかげ。ありがとう」

涙が零れそうになって敦也くんから視線を反らし、運転席の方に身体ごと向ける。


「明日からまた頑張ろうね」

泣いちゃダメだ。

私なりの強がりで、わざとらしく明るく敦也くんに伝えた言葉は、きっと涙をこらえているせいで声がかすかに震えてた。


「葵ちゃんが俺の担当理学療法士で良かった」

ふと、背中にかけられた敦也くんの言葉は、暖かで、それでいて優しい。

膝に置いていた私の手の甲に一粒だけ涙が零れた。



今日は私にとっては3次オーディションを受ける日だった。

オーディションを諦めてしまったことを後悔してる気持ちは嘘じゃない。

だけど、敦也くんの素敵な表情を見られたんだ。

それでいいよね?



誰が答えるわけでもない質問を頭で考えながら見た車窓の景色は、段々とオレンジ色の夕焼けが迫ってる色をしている。

心地よい音楽が車のラジオから流れていた。

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