朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


……え。笑満ちゃんも俺も、すっかりそんな記憶はない。


俺、笑満ちゃんより先にお母さんに告白していたのか?


「……すいません、そんなことあったんですか……?」


「あ、あたしもお母さんに言った憶えないよ!」


「んー? 笑満が一歳くらいの頃かしらねえ」


「「憶えてるわけない!」ですよ!」
 

と言うか、一歳児と二歳児に何訊いてんだ。
 

反論すると生満子さんは、「オトの両親も承諾済みよ」と胸を張って言われた。


それを言われると返す言葉がない……。


俺の母の仁奈子(になこ)さんと生満子さんは同い年で仲良しだったから、どんな言質を取っていると言われても全部本当っぽい。


「でもそれはあたしと仁奈の約束だから。先を決めるのは笑満とオトよ?」
 

生満子さんに言われて、はっと息を呑んだ。先を。


俺は座ったまま、二人に向けて頭を下げた。

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