誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「お兄ちゃん……」

 相手は、“お兄ちゃん”だ。

 そういえば、閑と地下鉄に乗って、日用雑貨を買いに行った時に、

【大丈夫だよ、元気だよ】

 とメッセージを返したきりだったことを思いだした。

(あの日は楽しかったな……)

 あれはたった数週間前の出来事のはずなのに、まるで夢物語のような気がしてくる。

 閑の優しい笑顔が、鮮やかに脳裏によみがえり、小春はまたグッと唇をかみしめた。

(だめ、思いだすとまた涙が出る……!)

 ぶんぶんと首を振り、それから深呼吸を繰り返す。

 ダイニングの椅子に座り、どう返事をしたものかと見つめていると――。
 なんと突然、“お兄ちゃん”から電話がかかってきた。

「わっ……!?」

 もしかしたらたまたま、既読になる瞬間を見たのかもしれない。
 慌てて小春は通話ボタンを押して、声を潜めながら、

「はい、もしもし……」

 と、電話に出る。

【――小春?】
「う、うん……」


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