誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
【急に電話してごめんな】
少しハスキー寄りな、懐かしいかすれた声を聞いて、小春はふっと肩の力が抜けるのを感じた。
「ううん、気にしないで。起きてたから大丈夫だよ」
小春はゆっくりと言葉を選びながら、電話の向こうにいる彼の姿を思い浮かべる。
少し硬めの短髪に、少し吊り上がった切れ長の目。背が高く、ワイルドな雰囲気があるので、黙っていると他人に怖く見られがちな彼は、オオカミのような見た目に反して、面倒見のいい性格をしている。小春の兄のような存在だ。
なんだかんだ言って、小春が東京に出てから一度も会っていないので、たまに電話で話をしてはいるが、懐かしい気持ちになる。
「お仕事、今、終わったの?」
【いや。日付が変わる前にはもう帰ってる】
「それでも毎日遅いでしょう。お疲れさま」
小春のいたわりの言葉に、電話の向こうで【サンキュ】と、少し笑う声が響く。
【でもな、そうでもねぇよ。先生の所にいた時の方が、ずっと厳しかったし。こっちはなんだかんだいって、人手は多いから、やることやればさっさと帰れるしな】
電話の向こうの“お兄ちゃん”が、ククッと笑う。