誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
多感な時期だったが、小春は妙に落ち着いていた。
感情を爆発させることもなく、そうかと受け入れただけである。
おそらく両親がそうなることは、数年前から肌で感じてわかっていたのだろう。
「そっか。会いたいとは思わないのか?」
まさかの問いかけに、小春はうーん……と言葉を濁す。
「私。本当に、もう、他人っていうか……よその家のお母さんなんだろうなって思ったら、私の入る余地はないというか。いや、私を産んだお母さんなんだろうけど、いきなり出て行って、連絡一つよこさなかったお母さんのこと、今さらどういうふうに感じたらいいか、わからなくて……」
母のことが憎いわけでもなく、恨んでいるわけでもない。
ただ、小春が小さい頃から感じていたのは、疎外感だけだ。
ひとりでいることに慣れてはいたが、ひとりが好きだったわけではない。
友達は欲しかったが、内向的な性格のせいか、作り方がわからなかった。
そして気が付けば、誰かを心底好きになるのが怖いという恐怖をぬぐえないまま、大人になってしまった。