誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 虎太郎はそう言って、渋い表情になる。

「しかも話の流れで、その人のプライベートな話になってな。バツイチで、十年前、離婚するまで、東京に住んでいて、元旦那はホテルの料理人。娘がひとりいたけれど、会っていない。風のうわさで夫の実家である徳島に親子で帰って、イタリアンレストランを開いたと聞いていると。ここまで聞いたら、もしかしてマジかって思うだろ」

 そして虎太郎は、真剣な表情で尋ねた。

「その人の名前は、岡嶋黎子(おかじまれいこ)」

 その瞬間、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

「お母さんの旧姓よ!」

 小春は唇をわななかせた。

「嘘……そんなこと……ある?」

 思わず両手で顔を覆っていた。

「――小春」

 虎太郎がうつむく小春の肩に手を置く。

「どうするんだ」

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