誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「そうだな。ずるいよな」

 虎太郎は小春の言葉を否定しなかった。
 そしてゆっくりと立ち上がると、全身をぶるぶると震わせている小春の顔を、覗き込んだ。

「会いたいんなら、会いに行けばいい。それで拒否されたら、それはそれで仕方ない」
「そうだよ、そんなのっ……そんなのっ……!」
「だけど、岡嶋さんは勝手に思ってるだけだ。いつか娘に会えたらって……会いに行くくわけでもなく、ただ、お前のことを思っているだけだ」
「――っ」

 ただ思っているだけ。その言葉がまっすぐに小春を刺す。

「俺が小春の知り合いだなんて、岡嶋さんは知らないし、こうやって小春に伝わることだって知らねぇよ」

 そして虎太郎は、きつく握りしめた小春の手をもっと大きな手で、握りしめる。

「だけど俺は、知ったからお前に伝えただけだ」
「……そんなのっ……なんでっ……」

 小春の大きな目から、涙が溢れて、頬を伝った。

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