誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
さっそく小春は、閑を見送った後、いつものように掃除や洗濯をこなし、なかもと食堂へと向かった。
本当は今すぐにでも徳島の実家に帰ろうかと思ったが、ルーティーンとして家事をすることで小春は気持ちが落ち着くので、そうすることにした。
朝は泣きたい気分だったが、中本の大将に会ったころは、だいぶ落ち着いていた。
昼のランチの時間を終え、小春が今朝のことを話すと、
「――ふぅん、なるほどな」
椅子に座って天井を睨みつけていた大将は、ゴブリとお茶を飲んだ後、顎ひげをゴシゴシとしながら、眉根を寄せた。
「知ってました?」
藁にもすがる気持ちで尋ねたが、彼は首を横に振った。
「まさか、知らねぇよ。こないだ夫婦ふたりと電話で話した時も、そんなそぶりなかったしな」
大将にとっても、増井夫婦の離婚危機は寝耳に水だったようだ。
「そうですか……」
もしかして、親友の大将であれば、なにか知っているのではと期待したが、仕方ない。