誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「店に電話したらいいかとは思ったんですけど、なんだかモヤモヤするし。とりあえず午後の飛行機をとったので、行ってきます。なにもなければ明日帰れると思うんですけど……なにかあると思ったほうが、いいかもしれないですよね」
美保は、いたずらであんなメッセージを送ってくる人ではない。だとしたらやはり状況は深刻なのではないだろうか。
「なーに、案外行ってみれば、ただの夫婦喧嘩で大したことねぇかもしんねぇぞ。そしたらまぁ、一年ぶりの帰省なんだし、積もる話もあるだろう。ゆっくりしてきたらいいさ」
大将はいつもの豪快さでそうやって小春を励まし、送り出してくれたのだった。
羽田発徳島着の飛行機は、予定通り夜の八時前に到着した。
空はどこまでも高く広く、星空が美しい。東京で日々忙しくしているとあまり思いださないが、空を見上げると帰ってきたのだと、懐かしい気持ちになる。
「さむ……」
コートの前のボタンを留めながら、小春はそそくさとバス乗り場へと向かった。空港から市内まで一時間もかからない。