誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
駅前からタクシーに乗り込み約三十分。向かった先は鳴門市の、小春もよく知る場所だった。
「やっ、やっ、山邑(やまむら)リゾート!」
海岸沿いの長い坂を上った先にある、白いホテル。冬ではあるが、芝生や生垣ひとつとっても美しく整えられて、手抜きの気配がどこにもない。しかも入り口には三メートルほどありそうなクリスマスツリーが並んでいる。
夜になればきっとイルミネーションが美しいことだろう。
「わぁ……」
タクシーの中から見た景色に、小春の心臓が跳ねた。
山邑リゾートは鳴門の海を一望できる超高級リゾートホテルで、部屋数は少なく、さらにお値段は一泊五万円からスタートという、庶民にはなかなか手が出ない憧れのホテルだ。
本館以外にも、高台に面した場所に別荘風のコテージがが七つあり、地元の女の子たちの間では、いつか彼氏と泊まってみたいねと、よく話題にするような、そんな場所だった。
もちろん小春だって、その女の子のひとりだったが、しょせん夢物語としか思っていない。まさか自分が恋人とここを訪れることになろうとは、思いもしなかったのだった。