誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「ただ……その、隠し事を正しいことだと思っているお父さんの事とか、あの偏屈で頑固なお父さんを理解してくれている美保さんですら、離婚と口走るくらいの危機的状況なのに、閑さんが来てくれたのが嬉しくて、全部ふっとんじゃった自分に、ちょっぴり自己嫌悪というか……」

 すると閑が優しく微笑んで、小春に顔を近づけ、額に唇を押し付けた。

「君の人生は君のものだ」
「え?」
「家族の問題を、全部ひとりで抱える必要はない。頼れるものは頼って、自分が潰れないようにしないと」
「閑さん……」

 確かに閑の言う通りかもしれない。
 以前の小春なら、ひとりで悶々と悩んだ挙句、思い通りにならない状況に感情を爆発させるか、結局底なし沼に落ちて、憂鬱な気分で閉じこもっていただろう。そういう自分が容易に想像できる。

「それに、君の恋人の職業はなんだと思う?」
「弁護士さん……です」
「そうだよ。ここで俺に頼らなくてどうするの。役に立つ男だよ」

 そして閑は、体をひねってひじまくらをついた。


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