誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 だがこの状況はどうだ。
 閑との圧倒的な体力差に、よれよれのヘロヘロで、目を閉じればすぐに泥のように眠りに落ちそうである。

(あ……本当に寝そう……)

 その気配を察知したのか、閑が小春の肩を優しく抱き寄せる。

(あったかい……)

 その仕草に、小春はなんだか無性に懐かしさを感じながら、眠りに落ちていく――。




 幼いころから、父は不在がちで、母とふたりきりの生活だった。
 だが小春はそれを寂しいと思ったことはあまりなかった。
 母は小春のために、いつもおいしい料理を作ってくれたし、小春がやりたいといえば、包丁の握り方から魚のさばき方、縫物から掃除だって、なんでも母が教えてくれた。

 幼い小春にとって、母は“完璧な存在”だった。


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