誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 時折、周囲の人間から父親が仕事一辺倒で、不在がちなことをチクチク言われることもあったのは事実で。『母子家庭みたいなものよ』と答えていた母を、かわいそうに思ってもいた。

 だから自分が、いつか母を支えなければならないと、感じていたように思う。

 だがそんな母も小春を置いて出て行き、小春は孤独になった。
 孤独と言っても、小春の周りには友人もいたし、父もいた。
 突然母を失った自分を、支えようとしてくれた人はたくさんいたはずだ。

 けれど、その好意も小春には虚しかった。

 内向的な性格に拍車がかかり、ひとりを好むようになった。
 他人と関わることに、心を開くことに、極度に慎重になってしまった。

(……全部……お母さんのせいだ……)

 そう、思いながらも、中学生の小春は、一度は段ボールにしまい込んだアルバムを、広げているのだ。

 何度も何度も、懐かしむように、母との写真を見詰めている。

(嘘よ……!)

 こんな記憶は今の小春にはなかったものだ。

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