誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「神尾の家で十分愛されたくせに、ワガママだなと思うけど」
「――そんなの……そんなのっ、ワガママなんかじゃ、ないですよっ……」

 なんとか絞り出し、口に出来たのは、それだけだった。

 そして唐突に、胸の奥底からこみあげてくるのは、ただ閑が愛おしいという気持ち、それだけで――。
 いつも守られてばかりで、助けられてばかりの自分がそんなことを考えるのは、おこがましいような気がしたが、それでも小春は思ったのだ。

 この人を、守りたい――と。
 人生のみちゆきの支えになり、力になりたいと。

「……そっか。ありがとう」

 閑がホッとしたように息を吐く。

 ゴォン……。

 鐘をつく音と、人々のはしゃく声がどんどんと近づく。そして初もうで客で、道路はあっという間に大行列の大渋滞になっていた。

「人が増えたね。こっちにおいで」

 閑が小春の肩を抱き引き寄せる。


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