誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 その蒼佑の顔を見て、小春は、少し違和感を覚えた。

(なんだろう、今の顔……)

 羨ましいと言いながら、蒼佑はどこか気落ちしていた。
 なぜか、傷ついているようにも見えた。

(でも、どうして?)

 誰もが知っているような大企業の御曹司に、いったいどんな憂いがあるというのだろう。

(なにか悲しいことでも思いだしたんだろうか……)

 気にはなったが、赤の他人で、親しくもない自分がそんなことを尋ねるのは、礼儀に反する気がした。結局なにもいえず、笑顔を作るだけだった。

「そういや、瑞樹は?」

 閑があたりを見回す。

 瑞樹というのは、閑の親友のひとりだ。まだ会ったことはないが、名前だけは小春も何度か聞いている。閑曰く「めちゃくちゃ女癖が悪いから今は会わせられない」ということだったが、本当だろうか。

(そもそも私、閑さん以外の誰も、目に入らないんだけどな)

 そんなことを思う、小春である。

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