誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「瑞樹はまだだな。来るとしたら夜だろうが、来ないかもしれないな」

 なんともあいまいだが、男同士の集まりなど、そういうものかもしれない。

「そうか。まぁ、勝手気ままを絵に描いたような奴だしね。じゃあ、またあとで」

 閑は軽くうなずいて、そのまま小春の手を取り、給仕をしている男性からアルコールの入ったグラスを受けとって、歩き出した。

「こっちだよ」

 閑が小春を連れて行ったのは、当然桜で満開ではあるが、みんなが座っている庭の中央より少しはずれた東側だった。

「ここ、昔から誰も来ない穴場なんだ」

 閑は桜の木の下にハンカチを引いて、座らせる。

(昔から……?)

 その瞬間、小春の胸になにかひっかかった。

 だが閑は気づかない。
 機嫌よく笑って、小春と並んで腰を下ろした。

 ひらひらと、桜の花びらが舞い散る。
 花の嵐だ。

 広大な日本庭園でこれほどの桜を間近で見られることなど、めったにないだろう。

 本当に贅沢な空間だった。

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