誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「きれい……」

 ぽつりとつぶやきながら、ついさっきの閑の言葉を思い出した。

“昔から――”

 きっと閑は、今まで何度もここに女の子を連れてきたのだ。
 肩を並べて桜を見上げて、きれいだねとささやき、女の子の肩を抱いて――。

 それは、閑のことを好きになってから、ずっと片思いをしていた頃には、芽生えなかった感情。

 閑に過去があって当然なのに、チリチリと胸が焦げる。

(私、いつまで閑さんの隣にいられるんだろう……)

 今、閑の気持ちを疑っているわけではない。
 本当に大事にしてもらっているし、閑と一緒にいて違和感など覚えたことは一度もない。

 けれどずっと好きでいてもらえるかと思うと、どうしても自信がない。

(どうしよう……閑さんが、他の誰かを好きになったら、どうしよう……)

 そんなことになったら、自分は生きていけない。

 目の前の幻想的で美しい景色と相まって、胸がぎゅーっと苦しくなり、息が詰まりそうになる。鼻の奥がツンと痛くなって、泣きそうになってしまった。

「――小春?」

 すん、と鼻をならしたところで、閑が異変に気付いたらしい。
 下から顔を覗き込んで、目を細める。

「どうしたの?」

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