誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 そう――。
 自分たちに限って。小春も閑も、間違いなくそう思っていたはずだ。

 気が付けば時計の針は深夜をまわり、槇は姿を消していて、ふたりで『とりあえずゴミをまとめよう』と、ゴミ袋に缶を集めていて。
 食器を洗っていて……。
 ふと、気が付いたら、隣で、小春が洗ったコップを拭いていた閑の唇が近づき、重なっていた。

 驚いたが、一方で、胸がときめき、心臓が止まりそうになった。

 腕をつかまれているわけでも、何でもない。
 ただ隣の閑が、顔だけを近づけてキスしただけだ。

「……小春ちゃん……」

 唇から、耳へと移動する彼の唇と吐息に、小春の全身に甘い痺れが走る。

 このキスで、閑を責めることはできない。
 自分だって、ゴミを集めながら、ネクタイを外し、ワイシャツのボタンをひとつ外した閑の横顔を、『なんだかいつもと違うみたい……色っぽいな』と見ていたのだ。

 あの手首に触れてみたい。
 大きな手に、頬を撫でられてみたい。
 いつか、背中を撫でてくれたように、全身を撫でてもらいたい――。

 そういう目で見ていたのだ。


< 46 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop