誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
(こないだみたいなことになったら大変だしね……)
『小春ちゃん……』
濡れたような熱っぽい目で、自分を見つめる閑。半裸の逞しい体に、少しエスっ気のある愛撫――。
(って、なに考えてるの!)
気を緩めると、つい思いだしてしまう。
小春は慌てて首を振り、それから料理に集中することにした。
「なにこれ美味しい!」
シャワーを浴びて、厚手のカットソーとスウェットパンツ姿に着替えた閑は、目を輝かせて、スープをせっせと口に運んだ。
「ストラッチャテッラといって、卵のスープなんです」
「ストラッ……? 一度じゃ覚えられないな……いやでもおいしい」
若干張り切り過ぎた気もするが、パクパクと食事を平らげていく閑を見ていると、小春は嬉しくなる。
「っていうか、小春ちゃん、すごい料理上手だ」
「一応イタリアンのシェフの娘ですから。これでプロになろうと思っているわけではないんですけどね」
「えーっ、もったいないな……いやマジでこんなにおいしい料理、家で食べられるなんて思わなかった。世界中に自慢したい」
閑の手放しの絶賛は恥ずかしいが、嬉しくもある。
「ありがとうございます」
小春はふふっと笑って、スープを飲み、パスタを口に運んだ。
(やっぱりやってよかったなぁ……いい初日になったんじゃない?)