誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
そんなこんなで、小春と閑の同居生活は穏やかに始まった。
「行ってきまーす! 今日は少し早く帰れると思うから!」
閑はニコッと笑って、元気よくマンションを飛び出して行く。
「わかりました。閑さん、いってらっしゃい。気を付けて」
小春は玄関で手を振りながら、静かの背中を見送った。
気が付けば特に問題もなく、同居生活も五日目の金曜日を迎えていた。
同居といっても、基本的に毎晩遅いので、閑のために、夜食のようなものを用意している。
起きて待っていてもいいのだが、自分が起きていると閑が気を使うのはわかっている。なので小春は、先にやすむようにしていた。
客間のベッドで横になっていると、玄関のドアがカチャリと開く音がして、閑の気配がする。小春が寝ていると思っている閑は、静かに廊下を歩き、夜食を食べ、シャワーを浴びて、廊下の向かいの寝室に入る。
ドア一枚を挟んだ向こうの閑の気配に、小春は彼の生活を盗み見ているような、いけない気持ちがして、なんだかとても特別な気がするのだった。