明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
仕事をさせてもらえず手持ち無沙汰になってしまった私は、お茶を口にしたあと障子を開け外を眺めた。


立派な庭にはたくさんの桜の木が植えてある。
もう少し経てば鮮やかな花を咲かせてくれることだろう。

その代わり鮮やかな赤色をした椿がいたるところに咲いている。

椿は、花びらが一枚ずつ散るのではなく、その根元からポロリと落ちてしまうので、縁起が悪いと言う人もいる。

だけど、美しさを保ったまま落ちたのだと思えば、それも悪くないなんて思ってしまう。

まるで初子さんのようだ。
彼女はおそらく人生で一番美しい瞬間に、逝ってしまった。

椿の近くの池には鯉も泳いでいる。


「餌はどうしているのかしら……」


せめて鯉の世話はさせてもらえないだろうか。
だってなにもしてはいけないなんて、拷問だもの。


「なんだ。餌をやりたいのか?」


そのとき、うしろから話しかけられ、飛び上がるほど驚いてしまった。
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